原料チョコレート工場
建設プロジェクト

日本チョコレート工業協同組合様

プロジェクトのミッション
生産性の向上と品質の安定化の実現
~老朽化に伴う工場移転プロジェクト~
プロジェクトの概要
製造品 原料チョコレート 4,100トン/年
製造工程 カカオ豆からチョコレートを一貫製造、
主要製造ライン 2ライン
敷地面積 22,706m2、 建築面積 4,616m2、
延床面積 7,014m2、鉄骨造 地上2階地下1階
竣工年 2020年
PROJECT INTERVIEW
お客様の声

日本チョコレート工業協同組合
林工場長

日本チョコレート工業協同組合
保坂部長

日本チョコレート工業協同組合
大倉課長

プロジェクト成功のポイント
プロジェクト発足の背景について教えてください。

計画自体は長年温められてきたものでした。旧工場には、老朽化の問題もありましたし、建て増しを繰り返した結果、一貫性に欠ける非効率な生産ラインとなってしまっていたのでなんとかしたいというのがプロジェクトの出発点。予算規模や準備期間から見ても歴史的な一大プロジェクトでした。

プロジェクトを成功させるためのポイントは何だと考えていましたか?

パートナー選びが重要だと考えていました。食品を扱う工場なので、工場建設と食品の生産設備両方に精通しているパートナーがベスト。その条件で探すなかで、日清エンジニアリングさんと出会いました。

条件を満たす企業はいくつかあったかと思いますが、パートナー選びの決め手は?

信頼ですね。何社か面談して比較させていただきましたが、日清エンジニアリングさんは説明が簡潔で丁寧でした。こういう進め方でいきたいというのが明確で、建築から生産設備まで全て責任もってやるという姿勢が見えました。それから、とにかく図面作成が正確で早く、大まかに言った内容もすぐ形にしてくれて、毎回の打ち合わせは図面化された資料を元に話し合うことができました。「これは信頼できる」と確信できましたね。

林工場長

    

既存工場
工場建設では、設計条件の設定、技術的な検証、予算管理、官庁への諸届、関係者とのさまざまな調整など、施主の業務は多岐に渡る。さらにプロジェクトは長期に渡り、工場建設の経験や専門知識が必要な場面も多くなるため、プロジェクトをマネジメントするのは容易ではない。今回は、日清エンジニアリングが日本チョコレート工業様のパートナーとして、工場建設ノウハウと技術力を注ぎ込んで工場のリニューアルに取り組んだ。ゴールである「生産性の向上と品質の安定化」の実現に挑戦したエンジニアのストーリーである。
移設工事の難しさ

保坂部長

大倉課長

プロジェクトの中で難しかった部分はどこですか? 

生産設備の移設期間が5ヶ月間と非常に短かったことですね。設備を止めて分解し、整備して全て移設するための最短期間として算出されたのが5ヶ月でした。移設期間中も製品供給を継続するため、停止期間をできるだけ短くしながら、在庫確保のための増産、停止期間中の製品供給の計画を綿密に立てました。生産設備の80%が移設でしたが、古い設備や海外の製機器も多く含まれていて、壊れないだろうか、期間内で移設できるのだろうか、と不安に感じていました。

竣工後50年以上の歴史ある工場の移設ですが、どこから着手したのでしょうか?

全てをリスト化するところから始めました。機器、それに付随する制御盤、ありとあらゆる設備を調査し、写真を撮ってナンバリングしました。そのリストに基づいて、持っていくべきか、修理が必要か、など判断していくのですが、その作業を工場が止まっている土日だけで行わなければいけません。さらに、図面など資料の約70%は手元になく、調査は難航しました。

資料がないものはどうするのでしょうか?

単純に一つ一つ調べていくしかなく日清エンジニアリングさんに協力いただいて3Dスキャンをとって機器外形調査をしたり、電気図面がない古い配線設備だと線を1本ずつ追いかけたり…。特に、ユーティリティ関係の調査は苦労されたのではないかと思います。例えば耐圧がわからない場合、実際に計測器をつけて測定するなど一つ一つ地道な作業をやっていただきました。

それだけの機械の移設となると、搬出・据付でトラブルもあったのでは?

日清エンジニアリングさんの図面化による計画のおかげで混乱はありませんでした。全ての機械に番号をふって、何日に何番を運んでどこに設置するのか、清掃はどの順番で行うか、など含めて詳細に検討していたので、搬出を担当した人達も図面を見ながらテキパキと搬出作業を行うことが出来ていました。トラブルというと、建屋を壊さないと搬出できない機械があることが分かって、「一体どうやって搬入したんだ」と頭を抱えた事はありました(笑)


生豆選別設備
移設を伴う工場のリニューアルでは、難易度が高く、緻密さと正確性が要求される業務が多い。既存設備の状態確認と調査、機器能力の検証、運用の確認、生産計画を踏まえた移設スケジュールの管理など、あらゆるケースに対する準備を行う必要がある。今回も、移設機器点数300以上、動力制御盤[新規:40面・転用:35面]、主要ベンダー20社以上という膨大な情報量を徹底的に整理・分析した。同時に行った技術的な検証にエンジニアが持つ経験をプラスすることで想定されるリスクを低減し、関係者と情報共有しながら移転計画の精度を高めることで、プロジェクトを成功へと導いた。
課題解決
工場設計にあたって考えていたコンセプトはどのようなものでしょうか?

シンプルで生産性の高い工場にしたいというのが一番でした。原料の受け入れから出荷まで一方向で流れていくラインを目指しました。また、安心安全の追求、環境への配慮、清掃性、将来の増設や更新に対応できる工場であることもコンセプトの重要な要素でした。

当初の課題は解決できましたか? 

全てにおいて満足しています。人とモノの最適な動線が確保できましたし、湿度管理や防虫対策など品質や衛生面でも向上が見られ、生産性が改善されました。また、粉体設備も大きくバージョンアップできたと思います。例えば、豆を受け入れるサイロ設備は新たに導入して、作業を自動化することを実現しながら、豆の破砕による焙煎品質の低下を防ぐ工夫も取り入れました。環境面に関しても、排水が日光市の基準とするBOD(生物化学的酸素要求量)の半分以下の数値にコントロールすることができ本当に安心しました。作業用梯子を減らすことや、デッキ足場を設けるなど高所でも作業員が安心して点検・清掃できるよう安全面も充実させました。それに関連して清掃性も、大きく改善したポイントの一つです。旧工場では掃除がしにくく、作業員に負担を強いる場面もありましたが、メンテナンスも含めて、工場運営に配慮された設備ができたと思います。

長期にわたるプロジェクトなので、コミュニケーションが特に重要だったのではないでしょうか?

とにかく打ち合わせを何回も行い、課題を共有しましたね。細かいことでも疑問はその都度解消していくというコミュニケーションスタイルが成功要因だったと考えています。打ち合わせの後、日清エンジニアリングさんは議事録や確認書類をすぐ送ってくれていたので、作業を進める上でいつも助かりました。また、長期にわたるプロジェクトでしたが、設計の段階から試運転まで同じメンバーが最後まで責任を持って担当してくれたのが心強かったですね。

大倉課長

    

微粒化・精練設備
旧工場で抱えていた課題を解決するために、生産設備と建築・建築設備を一貫した設計思想で計画した。また、動線計画やゾーニング計画の検討を積み重ね、工場全体が最適化されたレイアウトを検討した。作業のしやすさが損なわれることなく、品質に必要な衛生的な環境を構築することが必要であったが、生産設備と建築・建築設備をリンクさせるノウハウを活用することで、生産性と品質確保の両立させた。さらに、製造工程においては、機器単体の性能向上、操作性やモニタリング性を高めたユーザーインターフェース設計など、部分最適化も行うことで工場としての機能強化も行った。

カスケード式サイロ
新工場での生産設備計画では、自動化設備の導入にも積極的に取り組んだ。カカオ豆の貯槽設備を導入することにより、それまで行われていた手投入作業を廃止。さらに、カカオ豆の割れよる焙煎品質の低下や発酵菌の飛散を防ぐため、カスケード式サイロを採用し、新しい搬送方式のコンベヤ設備とすることで品質低下の防止対策を施した。日清エンジニアリングが持つ粉体ハンドリングのノウハウと日本チョコレート工業様の持つ製造ノウハウを融合させることで、より高い生産性で、より高品質な製品づくりができる生産ラインを実現した。
プロジェクト振り返り

林工場長

プロジェクトを終えた今の率直な感想をお聞かせください。 

ストレートな製造ラインを実現でき、生産性が飛躍的に向上したことを実感しています。驚いたのは、歩留まりが良くなったことが数字にはっきりと表れたことです。それから、実際に工場を運用していく中で「ここは少し配置を変更しよう」というような修正が一つもないんですよ。通常、多少はそういうこともあるはずなので、設計の的確さに感心しました。さらに、スケジュールがタイトなので心配していましたが、終わってみれば何一つ遅れることなく全て計画通りに進んだことにもびっくりしました。徹底的に準備したおかげだと感じています。

日清エンジニアリングのプロジェクトメンバーに向けて、ひとことお願いします。 
大倉課長: まさか自分が工場を作る業務を担当するとは想像もしなかったし、どこから始めていいのかも分からない状態でした。しかし、日清エンジニアリングさんの迅速な対応力と行動力、プラスアルファの提案のおかげで、パフォーマンスの高い工場ができました。仕事への取り組み方や姿勢も学べて、私のキャリアの中でも非常に充実した3年間になりました。
保坂部長: 当初は不安でいっぱいでしたが、打ち合わせを重ねるごとに徐々に解消され、最後には自信を持って完成させることができました。現在、HACCP取得に取り組んでいますが、連携いただいている外部コンサルから指摘される事項がありませんでした。日々の細かい運用まで考えられて計画されていたんだなぁと改めて感じています。
林工場長: これまで複数の工場建設を経験しましたが、ここまで計画通りにいったプロジェクトは初めてです。その代わり、打ち合わせは通常の3倍ぐらいやったんじゃないでしょうか(笑)。そのおかげでこの規模の工場建設にも関わらず、トラブルがゼロだったんだと考えます。イメージで伝えた内容も即座に理解して図面化する、日清エンジニアリングさんのプロ意識とレベルの高さを感じていました。心残りなのは、新型コロナウイルスの影響で打ち上げが出来なかったことですね。気兼ねなく対面で話しが出来る日を楽しみにしています。
VOICE
プロジェクト担当者の声

藤崎 安史
プロジェクトリーダー

今回、初めてのお付合いとなりましたが、当社の、プロジェクトを一つ一つ実直に進めるスタイルを受け止めていただきありがとうございました。 決められた予算・スケジュールの中で、「より良いもの創りあげたい」という思いを共有し、一貫してプロジェクトを進めることができ、当社としても貴重な経験をさせていただきました。秋頃には点検の時期を迎えますが、今後ともどうぞよろしくお願いします。

岩崎 誠
建築担当

工場の完全移転ということで工期厳守・建物の機能維持向上は勿論のこと、地域・環境に永続的に溶け込めることを目指し工事を進めてきました。同席頂いた住民説明会でのお客様の明確なコミットメントが後押しとなり地域・環境へのトラブルなく無事完成することが出来ました。有難うございました。

藤本 克己
電機担当

竣工後、早くも1年を経過しましたが、ノントラブルで歩留りも殆ど発生していない状況と伺いました。既設設備のオペレーションやインターロック等について多くの時間、ヒアリングにお付き合い頂いたおかげで充分な設計・試運転計画が出来た結果だと思います。 有難う御座いました。

和田 拓也
設備担当

今回のプロジェクトは、計画と事前調査が肝だと思い、注力しましたが、至らぬ点もあったかと思います。お客様から学ばせて頂いたところも多く、私自身が成長出来たプロジェクトだったかと思います。それ以上にお客様にご満足頂けた事が、非常に嬉しいです。 これからも日々、自身に課せられた役割を果たす様、取り組んでまいります。ありがとうございました。

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