液晶パネル製造を支えるスペーサ散布装置
液晶パネルの原理
テレビ、パソコン、携帯電話など私たちの身の回りには液晶パネルが大変多く使用されています。液晶表示の方法はいくつかありますが、その代表的なTN方式(Twisted Nematic)について説明をします。液晶パネルは上下2枚のガラス基板の間に、液晶を挟み込んだ構造となっています。液晶分子は光をねじる機能を持っており、液晶分子の並びを制御することで光の透過、遮断を行うことが出来ます。また、液晶分子は電界に沿って分子が並ぶので上下の2枚のガラス基板間に電圧を印加することで、液晶分子の方向を変えることができます。この原理を使って光らさせたい画素に電圧を印加し、光のオン-オフをしてさまざまな画像表示を行っています。ちなみに、良く耳にするTFTとは薄膜トランジスタのことで電圧を印加するスイッチングを行っています。
液晶パネルの原理図
液晶スペーサ散布装置とは
2枚の基板間に液晶分子を配列するのですが、ここで重要なのが基板間の距離です。これをセルギャップと呼びますが、セルギャップが均一でないと分子が整然と並ばず、思うように表示をさせることが出来なくなります。セルギャップは4μm程度が一般的で、このセルギャップを形成するために粒子径が均一で球状の粉体(これをスペーサと呼びます)を基板上に散布する方法があります。
液晶パネルの断面
ディスパミューRの開発を始める少し前、1980年代は地球温暖化問題でフロンの使用を撤廃する動きが始まった時でした。それまで、スペーサの散布は液体フロンにスペーサを分散させ二流体ノズルから噴霧する手法がとられていました。また、この年代は液晶量産を睨み各メーカーとも次々と大型投資を計画していた時期です。この様な背景で、スペーサ散布をどうするかは、液晶パネルメーカーの大きな課題(ボトルネック)になり、液晶パネルメーカーの技術者はこの問題の解決に頭を悩ませていた時代した。
フロンに変わる媒体を使って安定的に液晶パネルを作るにはどうしたらいいのかという課題に応えたのがディスパミューRです。フロンに代わり、アルコールと純水を使った湿式方式と、液体を一切使わず圧縮ガスを使った乾式方式が考案されていましたが、いずれも装置開発が追いつかず決定打が無い状態でした。ディスパミューRは乾式方式を採用し製品がウエットの媒体に接触しない、液晶メーカーとして最も安心して採用できる方法で装置を開発しました。1990年初頭から本格的に販売をスタートしましたが、性能・安定性が液晶パネルメーカーに高く評価され爆発的に販売台数を伸ばし、日本国内はもとより現在液晶生産拠点となっている韓国、台湾、中国にも採用され、70%を超えるシェアを獲得しています。
散布装置例
技術要素
ディスパミューRは粉体を乾式で散布するという装置ですが、その基礎は粉体の定量供給、分散という技術です。日清製粉グループ及び当社は粉体に係わる単位操作の研究を長年続けており、この技術を駆使することで装置の開発に成功しました。
スペーサ散布装置には、おおよそ3g/h~5g/hという微量な供給量と4μm程度の粉体を単一粒子に分散させることが要求されました。このターゲットに対し、ロールフィーダーや細管分散方式を確立し対応しました。これにより、見事に分散されたスペーサを基板全面に均一に散布することが可能となりました。また、後日談になりますが、開発当初は高速気流を使って衝突により凝集粒子を分散させるのが技術コンセプトでしたが、販売・改良を進めていく段階で、実は粒子が帯電することで綺麗に分散するという新たな発見もありました。
最近の動向
液晶パネルは表示性能を向上させるため日々研究が進められています。最近は大型テレビ、スマートフォンなどが普及していますが、これら最新の液晶パネルは高精細、高視野角、高速応答など要求されスペックは非常に高度になっています。残念ながらスペーサはこれら高機能化される液晶製品には不向きで採用されていませんが、現在でもさほど要求が厳しくないモノクロ表示や小型の表示用パネルは、当社のディスパミューRを使って、スペーサを散布した製造が行われています。
お問い合わせ
メールでのお問い合わせは
下記よりどうぞ。